今では多くの車に標準装備されているキーレスエントリーシステムですが、その登場はいつ頃で、どのように進化してきたのでしょうか。そして、これから先、キーレスエントリーはどのように変わっていくのでしょうか。キーレスエントリーシステムの原型とも言えるものは、1980年代初頭に一部の高級車に採用され始めました。当時のシステムは、赤外線を利用したものが主流で、リモコンを車両の受信部に向けて操作する必要があり、電波式に比べて操作範囲が狭く、障害物にも弱いという課題がありました。その後、1980年代後半から1990年代にかけて、電波を利用したキーレスエントリーシステムが登場し、徐々に普及していきます。これにより、操作範囲が広がり、リモコンを車両に向けなくても操作できるようになるなど、利便性が大きく向上しました。当初は、ドアの施錠・解錠機能が主でしたが、次第にトランクオープン機能やアンサーバック機能(ハザードランプの点滅やブザー音で動作を知らせる機能)などが追加されていきました。セキュリティ面でも進化が見られ、固定コード方式からローリングコード方式へと移行し、不正コピーのリスクが低減されました。そして2000年代に入ると、キーレスエントリーはさらに進化し、「スマートキー」システムが登場します。キーを携帯しているだけでドアノブに触れたり、エンジンスイッチを押したりするだけで操作が可能となり、利便性が飛躍的に向上しました。スマートキーには、ウェルカムライト機能やハンズフリーパワーバックドアなど、より高度な機能も搭載されるようになっています。では、キーレスエントリーの未来はどうなるのでしょうか。一つの方向性として、スマートフォンとの連携強化が挙げられます。既に一部の車種では、スマートフォンアプリを使ってドアの施錠・解錠やエンジンの始動、車両情報の確認などが可能になっています。将来的には、物理的なキーを持たず、スマートフォンだけで全ての操作が完結する時代が来るかもしれません。また、生体認証技術(指紋認証や顔認証など)の活用も進むと考えられます。運転者ごとにシートポジションやオーディオ設定などを自動調整したり、より高度なセキュリティを実現したりすることが期待されます。