車の鍵を元鍵ごと全てなくしてしまった場合、特に近年の車に多く搭載されている「イモビライザー」付きの鍵の場合は、合鍵作成はより複雑になります。イモビライザーとは、キーに埋め込まれたICチップの固有IDと、車両側のコンピューターに登録されたIDが一致しないとエンジンがかからない盗難防止システムです。そのため、単に鍵の形状をコピーするだけではエンジンを始動させることができません。元鍵がない状態でイモビライザーキーを作成するには、主に二つの方法が考えられます。一つは、自動車ディーラーに依頼する方法です。ディーラーでは、車検証に記載されている車体番号などの情報から、メーカーに保管されているキー情報を照会し、新しい純正キー(イモビライザーチップ内蔵)を作成することができます。そして、専用の診断機器を使って、新しいキーのID情報を車両側のコンピューターに登録(再登録)する作業を行います。この方法は、純正部品で確実性が高い反面、費用が高額になる傾向があり、部品の取り寄せや作業に時間がかかる場合もあります。もう一つの方法は、イモビライザーに対応できる専門の鍵業者に依頼する方法です。一部の高度な技術を持つ鍵業者は、ディーラーと同様に、車両のコンピューターにアクセスし、新しいキーの情報を登録する作業が可能です。業者によっては、現場まで出張して作業してくれる場合もあり、ディーラーよりも迅速かつ安価に対応できる可能性があります。ただし、業者によって技術レベルや対応車種、料金体系が大きく異なるため、依頼する際には慎重な業者選びが必要です。実績や評判、料金の内訳(キー本体代、カット代、イモビライザー登録料、出張費など)を事前にしっかりと確認しましょう。従来のギザギザした鍵(イモビライザー非搭載)であれば、鍵穴から形状を読み取って作成できる場合もありますが、それでも専門的な技術が必要です。いずれにしても、車の元鍵を全て紛失した場合は、ディーラーまたは信頼できる専門の鍵業者に相談し、状況に合った最適な方法を選択することが重要です。