数年前の夏、私の友人が空き巣被害に遭いました。幸い、家族が留守中の出来事で人的被害はありませんでしたが、現金や貴金属などが盗まれ、何よりも精神的なショックは計り知れないものでした。警察の調べによると、侵入の手口は玄関ドアの「ピッキング」によるものだったそうです。友人の家の玄関には、ごく一般的なギザギザの鍵が付いていましたが、特に古いタイプというわけでもなく、まさか自分たちが狙われるとは思ってもいなかったと話していました。犯行の痕跡はほとんどなく、鍵穴に微かな傷が残っている程度だったため、帰宅してドアが開いていることに気づくまで、何が起こったのか全く分からなかったそうです。家の中が荒らされているのを見て、初めて被害に気づき、警察に通報。現場検証が行われ、ピッキングの可能性が高いと判断されました。犯人が家の中にいた時間はわずか10分程度と推測されましたが、その短時間でタンスや引き出しが物色され、金目のものが根こそぎ持ち去られていました。友人が最もショックを受けていたのは、物理的な被害以上に、「見知らぬ誰かが、鍵を開けて家の中に侵入し、自分たちのプライベートな空間を物色した」という事実そのものでした。それ以来、家にいても物音に過敏になったり、夜なかなか寝付けなくなったりと、精神的なダメージは長く続いたと言います。この経験から、友人はすぐに玄関の鍵を防犯性の高いディンプルキーに交換し、さらに補助錠も取り付けました。「鍵なんて、かかっていればどれも同じだと思っていた。でも、それは大きな間違いだった。防犯性の高い鍵を選ぶこと、そしてワンドアツーロックにすることが、いかに重要かを身をもって知った」と語っていました。この話は、決して他人事ではありません。ピッキングは、鍵の種類を選びます。もし、あなたの家の鍵がピッキングに対して脆弱なタイプであれば、いつ被害に遭ってもおかしくないのです。友人の体験は、鍵の防犯性能に対する意識を高め、適切な対策を講じることの重要性を、私たちに痛切に教えてくれます。目に見える被害だけでなく、心に残る傷の深さを考えると、ピッキング対策は決して後回しにしてはいけない課題なのです。