あれは忘れもしない、残業で疲れ果てて帰宅した深夜のことでした。いつものように玄関のドアの前でポケットを探ると、あるはずの鍵の感触がありません。カバンの中も、上着のポケットも、どこを探しても見当たらないのです。血の気が引くのを感じました。昼間、どこかで落としたのか?それとも会社に忘れてきた?しかし、会社に電話しても誰も出ません。スペアキーは、引っ越しの際に実家に預けたままでした。完全に締め出されてしまったのです。途方に暮れ、スマートフォンの明かりを頼りに、近所の24時間営業の鍵屋さんに電話しました。「元鍵がないと合鍵は作れないんですよ」という非情な宣告。やはりそうか、と落胆しつつ、とりあえず鍵を開けてもらうことにしました。深夜料金も加算され、痛い出費でしたが、ともかく家の中に入れた時の安堵感は忘れられません。しかし、問題は解決していません。なくした鍵がどこにあるのか分からない以上、誰かに拾われて悪用される可能性だってあります。その不安を抱えたまま眠るのは、どうしてもできませんでした。翌日、私は管理会社に連絡し、事情を説明して鍵交換の許可をもらいました。そして、改めて鍵屋さんに来てもらい、玄関のシリンダーごと新しいものに交換してもらったのです。費用は鍵開けと合わせてかなりの額になりましたが、ピカピカの新しい鍵と、防犯性の高いディンプルキーシリンダーを手にした時、ようやく心の底から安心することができました。「鍵をなくしたくらいで大げさな」と思う人もいるかもしれません。しかし、私にとっては、自宅の安全という何物にも代えがたいものを守るための、必要な投資でした。この経験を通して、私は二つのことを学びました。一つは、スペアキーはすぐに取り出せる場所に保管しておくことの重要性。もう一つは、鍵を紛失したら、迷わず鍵交換を選択することの重要性です。合鍵が作れないか、と安易な方法を探すよりも、根本的な解決策を選ぶことが、結果的に最も安全で、精神的な安心にもつながるのだと痛感しました。もし、あなたが今、同じように鍵をなくして困っているなら、私の体験が少しでも参考になれば幸いです。