あるオフィスの円筒錠がもたらした変化


都心にオフィスを構える中堅のデザイン会社「クリエイティブ・ネクスト」。社員十数名の小さな会社だが、活気があり、常に新しいアイデアが飛び交う自由な雰囲気が特徴だった。しかし、その自由さゆえの悩みもあった。それは、会議室のプライバシー確保だ。会社の規模が小さいため、会議室はクライアントとの打ち合わせだけでなく、社員同士のブレインストーミングや、時には集中して作業したい個人のためのスペースとしても利用されていた。ドアはごく普通のドアで、施錠機能はなかった。そのため、重要な会議中に他の社員がうっかり入ってきたり、集中して作業している時に声をかけられたりすることが頻繁にあり、業務の効率低下や情報漏洩のリスクが懸念されていた。社長の田中は、この状況を改善すべく、何か良い方法はないかと考えた。大掛かりな改修工事をする予算はない。そこで思いついたのが、会議室のドアに鍵を取り付けることだった。しかし、仰々しい電子錠や、常に鍵を持ち歩かなければならないシリンダー錠は、会社の自由な雰囲気に合わない気がした。そんな時、総務担当の佐藤が提案したのが「円筒錠」だった。内側から簡単に施錠でき、外側からは使用中かどうかがわかる表示錠タイプなら、プライバシーを守りつつ、利便性も損なわないのではないか、という提案だった。価格も手頃で、取り付けも簡単そうだ。田中社長はその提案を採用し、早速、表示窓付きの円筒錠を会議室のドアに取り付けることにした。取り付け作業は業者に依頼し、半日ほどで完了した。新しい円筒錠は、シルバーのシンプルなデザインで、ドアにすっきりと馴染んでいる。内側のサムターンを回すと、外側の表示窓が「空室」から「使用中」に切り替わる仕組みだ。変化はすぐに現れた。まず、会議や打ち合わせ中に人が入ってくることがなくなった。表示窓で確認できるため、ノックする前に使用状況がわかり、無駄な中断が減ったのだ。クライアントとの機密性の高い打ち合わせも、安心して行えるようになった。