鍵のピッキング手口とその仕組み


ピッキングとは、鍵穴に特殊な工具を挿入し、錠内部の機構を操作して正規の鍵を使わずに解錠する不正な手口のことです。映画やドラマなどで描かれることもありますが、これは決してフィクションの世界だけの話ではなく、現実の空き巣被害においても用いられる侵入手段の一つであり、その危険性を正しく理解しておくことが防犯の第一歩となります。ピッキングの標的となりやすいのは、主に「ピンシリンダー」や「ディスクシリンダー」といった構造の鍵です。ピンシリンダー錠の内部には、複数のピン(障害物)が異なる高さで設置されており、正しい鍵を差し込むと、これらのピンが鍵のギザギザによって適切な高さに押し上げられ、シリンダー(内筒)が回転できる状態になります。ピッキングでは、「テンションレンチ」と呼ばれるL字型の工具でシリンダーに回転方向の力を加えながら、「ピック」と呼ばれる細い棒状の工具でピンを一本ずつ適切な高さに持ち上げていきます。全てのピンが正しい位置に揃うと、シリンダーが回転し、解錠に至ります。一方、ディスクシリンダー錠(現在は廃番になっているものが多い)は、内部に複数のディスク(円盤状のタンブラー)があり、正しい鍵によってディスクの切り欠きが一列に揃うことでシリンダーが回転します。このタイプも、構造によっては比較的容易にピッキングが可能とされています。ピッキングの恐ろしい点は、鍵やドアを物理的に破壊することなく、短時間で、しかも静かに侵入できてしまう可能性があることです。そのため、被害に遭ってもすぐには気づきにくく、犯行の痕跡も残りにくいという特徴があります。特に、古いタイプの鍵を長年使用している場合は、知らず知らずのうちにピッキングの危険に晒されている可能性があります。このような被害を防ぐためには、まず自宅の鍵がどのようなタイプのものなのかを確認し、もしピッキングに対して脆弱なタイプであれば、対策を講じることが不可欠です。鍵の仕組みを知り、その弱点を理解することが、有効な防犯対策へと繋がるのです。