愛車の鍵をなくしたあの日の記憶


あれは忘れもしない、肌寒い秋の日の夕暮れ時でした。友人と郊外のカフェでお茶をし、さて帰ろうかと駐車場に向かい、いつものようにポケットを探った瞬間、血の気が引くのを感じました。いつもそこにあるはずの、愛車のスマートキーの感触がないのです。ジャケットのポケット、ズボンのポケット、カバンの中、考えられる場所を何度も確認しましたが、どこにもありません。急いで店内に戻り、座っていた席の周りやトイレなどを必死に探しましたが、見つかりません。店員さんにも事情を話し、届けられていないか確認しましたが、答えはノーでした。外はすでに暗くなり始めており、焦りと不安で心臓がバクバクしていました。スマートキーなので、メカニカルキーも内蔵されていますが、そのキー本体が丸ごとないのですから、どうしようもありません。自宅にスペアキーはありますが、ここは自宅から数十キロ離れた場所。とりあえず、加入している自動車保険のロードサービスに電話をしてみました。状況を説明すると、鍵の作成や解錠の手配は可能だが、スマートキーの場合は作成に時間がかかること、費用も高額になる可能性があることを告げられました。しかも、その場で作成できるかは車種や状況によるとのこと。途方に暮れかけましたが、オペレーターの方が「まずは落ち着いて、もう一度身の回りや立ち寄った場所をよく確認してみてください」とアドバイスをくれました。その言葉に少し冷静さを取り戻し、もう一度、自分の行動を振り返ってみました。カフェに入る前、駐車場で何かをポケットから出した記憶…そうだ、スマホを取り出した時に、一緒にキーが滑り落ちたのかもしれない。友人と共に懐中電灯を頼りに駐車場を探し直しました。車の周り、歩いた通路、植え込みの近く…そして、ついに友人が「あった!」と声を上げました。側溝の蓋のすぐそばに、私のスマートキーが落ちていたのです。泥で少し汚れていましたが、紛れもなく私のキーでした。安堵のあまり、その場にへたり込みそうになりました。あの時の、絶望から一転して安堵感に包まれた感覚は、今でも鮮明に覚えています。この経験以来、スマートキーには少し大きめのキーホルダーをつけ、カバンの特定のポケットに入れるようにしています。車のキーをなくすということが、どれほど大変で心細いことか、身をもって体験したからです。皆さんも車のキーの管理にはくれぐれもご注意ください。