鍵のプロが語る鍵折れ救出術


「鍵が中で折れちゃって…」というSOSは、私たち鍵屋にとって日常的に受ける依頼の一つです。お客様は皆さん、本当に困り果てた様子で連絡をくださいますね。玄関の鍵だったり、車の鍵だったり、状況は様々ですが、鍵穴の中に金属片が残ってしまった状態は、確かに絶望的に感じるでしょう。でも、安心してください。私たちプロには、そういった状況を解決するための専門的な技術と道具があります。まず現場に到着したら、鍵穴の状態を詳しく確認します。折れた鍵の破片がどのくらいの深さにあるのか、鍵穴の種類(ディスクシリンダー、ピンシリンダーなど)は何か、といった情報を把握することが重要です。多くの場合、私たちは「鍵抜き工具」と呼ばれる特殊なツールセットを使用します。これは、非常に細くて先端に返しや引っ掛かりがついた金属製のピックのようなもので、様々な形状のものがセットになっています。この工具を鍵穴の隙間に慎重に挿入し、折れた鍵の破片に引っ掛けたり、挟んだりして、少しずつ手前に引き出してくるのです。言うのは簡単ですが、鍵穴の内部は非常に精密にできていますから、内部のピンタンブラーなどを傷つけないように、細心の注意を払いながら作業を進める必要があります。指先の感覚と経験がものを言う、繊細な作業ですね。破片が比較的浅い位置にあれば、数分で取り出せることも多いです。しかし、奥深くに入り込んでいたり、鍵穴内部で複雑な形で引っかかっていたりすると、少し時間がかかることもあります。稀に、お客様がご自身で針金などを突っ込んでしまい、状況が悪化しているケースもあります。そうなると、取り出し作業はさらに難しくなります。だから、私たちはいつも「無理にいじらないでください」とお願いするのです。瞬間接着剤を使おうとした痕跡がある場合も厄介ですね。接着剤が内部で固まっていると、最悪の場合、シリンダーを破壊して交換するしかなくなります。そうなると費用もかさんでしまいます。もし、どうしても鍵抜き工具だけでは取り出せない場合、シリンダーを分解して破片を取り出すという方法もあります。これは少し大掛かりになりますが、シリンダー自体を交換するよりは安価に済むことが多いです日頃から鍵の抜き差しがスムーズか、鍵に亀裂などが入っていないかなどをチェックし、少しでも異常を感じたら早めに鍵屋に相談することをお勧めします。