プロが語るピッキング対策の急所


長年、錠前技師として現場に立っていますと、ピッキングという手口がいかに巧妙で、そして対策がいかに重要かを日々痛感します。お客様から「どんな鍵なら絶対にピッキングされないのか?」と尋ねられることも多いのですが、残念ながら「絶対に破られない鍵」というものは存在しません。しかし、限りなくピッキングを困難にし、侵入を諦めさせる確率を高める方法は確実に存在します。その急所とも言えるポイントを、プロの視点からお話ししましょう。まず、基本中の基本ですが、ピッキングに弱いとされる旧式のディスクシリンダーや、一部のピンシリンダーが付いている場合は、迷わず交換することです。これはもう、議論の余地がありません。玄関のドアが開けっ放しになっているのと同じくらい危険な状態と言っても過言ではないでしょう。交換するなら、やはりディンプルキーシリンダーかロータリーディスクシリンダーが現時点での最適解です。これらの鍵は内部構造が複雑で、ピッキングには高度な技術と時間、そして特殊な工具が必要となります。侵入犯は時間をかけることを嫌いますから、これらの鍵が付いているだけで大きな抑止力になります。特に「CPマーク」が付いている製品は、一定の防犯性能が保証されているので、選ぶ際の目安にしてください。次に、ワンドアツーロックの徹底です。高性能な主錠に加えて、補助錠を取り付けることはもはや常識と言ってもいいくらい重要な対策です。単純に考えて、鍵を開ける手間が二倍になるわけですから、侵入を諦めさせる効果は絶大です。補助錠も、もちろんピッキングに強いタイプを選んでください。そして意外と見落としがちなのが、鍵穴(シリンダー)の取り付け状態です。どんなに高性能なシリンダーでも、取り付けが甘かったり、ドアとの間に隙間があったりすると、そこを狙って破壊されたり、こじ開けられたりする可能性があります。信頼できる専門業者に依頼し、しっかりと確実に取り付けてもらうことが重要です。また、ピッキング対策だけではなく、サムターン回しやカム送り解錠、こじ開けなど、侵入手口は多様化しています。玄関ドア全体の強度や、窓の防犯対策なども含めた、総合的な視点での対策が求められます。それで、高性能な鍵を選ぶこと、ワンドアツーロックを実践すること、そして確実な施工を行うことなど、総合的な防犯意識を持つことが、大切な住まいを守る鍵となるのです。