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ツーリング先でバイクの鍵を紛失した場合
抜けるような青空の下、海岸線を走るワインディングロード。ツーリングの醍醐味を存分に味わい、目的地の絶景カフェで一息つく。最高の時間です。しかし、その至福の時間は、帰路につこうとした瞬間に、悪夢に変わることがあります。ジャケットのポケットを探っても、カバンの中を探っても、そこにあるはずのバイクの鍵がないのです。見知らぬ土地、時刻はすでに夕暮れ。携帯の電波も心もとない。そんな絶望的な状況に陥った時、あなたならどうしますか。ツーリング先での鍵紛失は、自宅近辺でのトラブルとは、その深刻度が全く異なります。まず、スペアキーを取りに帰るという選択肢は、ほぼありません。そして、バイク屋やディーラーに依頼するにしても、レッカーで長距離を移動させる必要があり、莫大な費用と時間がかかってしまいます。このような状況で、唯一かつ最善の希望の光となるのが、出張サービスに対応してくれる「鍵の専門業者」です。スマートフォンで、「現在地+バイク 鍵 作成」などのキーワードで検索し、対応可能な業者を探し出すことが、最初の行動となります。電話をかける際は、パニックにならず、まず自分の現在地を、できるだけ正確に伝えましょう。市町村名だけでなく、近くの大きな目標物(道の駅、有名な観光地など)を伝えるのがコツです。そして、バイクのメーカー名と車種、できれば年式も伝えます。これにより、業者は、その鍵が特殊なもの(イモビライザー搭載など)であるかを判断し、対応の可否と、おおよその料金、そして到着までの時間を教えてくれます。山間部など、場所によっては、到着までに数時間かかることも覚悟しておく必要があります。そして、何よりも重要なのが、このような事態に備えた「事前の準備」です。スペアキーを、ウェアの別のポケットや、同行する友人に預けておく。その小さな備えが、いざという時に、あなたを絶望の淵から救い出してくれるのです。
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鍵トラブルで騙されないための業者選定術
バイクの鍵を紛失したという緊急事態は、人の冷静な判断力を鈍らせます。一刻も早くこの状況から脱したいという焦りにつけ込んで、法外な料金を請求したり、ずさんな作業を行ったりする悪質な鍵屋が存在するのも事実です。パニックの中で誤った選択をしないために、信頼できる優良な業者を見分けるためのポイントを知っておくことは、自分の身を守るための重要な知識となります。まず、広告の「激安」表示を鵜呑みにしてはいけません。「鍵作成三千円から」といった謳い文句は、あくまで最低料金であり、実際には出張費、作業費、深夜料金などが次々と加算され、最終的には数万円を請求されるケースが後を絶ちません。電話で問い合わせる際には、「全ての費用を含んだ総額で、およそいくらになりますか」と、必ず料金の全体像を確認しましょう。この時、明確な料金体系を説明せず、「現場を見てみないことには何とも言えない」の一点張りの業者は注意が必要です。優良な業者であれば、車種や鍵の種類を伝えれば、ある程度の料金の幅を提示してくれるはずです。次に、電話応対の丁寧さも重要な判断基準です。こちらの状況を親身に聞いてくれるか、専門用語を多用せず分かりやすく説明してくれるかなど、対応の質からその会社の姿勢が見えてきます。会社の所在地がウェブサイトに明記されているか、固定電話の番号があるかも確認しましょう。所在地が不明確で、携帯電話の番号しか記載がない業者は、トラブルがあった際に連絡が取れなくなるリスクがあります。そして、最も重要なのが、作業を始める前に必ず書面での見積もりを提示してもらうことです。作業内容と料金に納得できない場合は、その場で断る勇気も必要です。
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車の鍵を開ける専門道具とは
車のドアに、キーを閉じ込めてしまう、いわゆる「インロック」。そんな、絶望的な状況に陥った時、駆けつけてくれた、JAFの隊員や、鍵屋の技術者が、驚くほど、あっさりと、ドアを開けてしまう光景を、見たことがある方も、いるかもしれません。彼らは、一体、どのような「魔法の道具」を、使っているのでしょうか。車の鍵開けに使われる専門道具は、車種や、そのロック機構によって、使い分けられますが、主に、二つの系統に大別されます。一つは、「鍵穴(シリンダー)」から、直接アプローチする、伝統的な方法です。これは、住宅の鍵開けと同じく、「ピッキング」という技術を用います。しかし、自動車の鍵穴は、住宅のものとは、内部の構造が異なる、特殊なものが多く、特に、鍵の表面に、波のような溝が彫られた「ウェーブキー(内溝キー)」などは、ピッキングの難易度が、非常に高くなります。そのため、プロは、それぞれのメーカーや、鍵のタイプに、特化した、専用のピッキングツールを、使い分けます。もう一つが、より現代的で、多くの現場で使われている、「ドアの隙間」から、アプローチする方法です。これは、まず、ドアと、ボディの隙間に、傷がつかないように、保護材を差し込み、そこに、ポンプで空気を送り込んで膨らませる、特殊な「エアバッグ(ウェッジ)」を、挿入します。そして、エアバッグを、ゆっくりと膨らませることで、ドアを、数ミリから一センチ程度、安全に、押し広げるのです。そして、その、わずかに生まれた隙間から、先端が、様々な形状に加工された、細くて長い、金属製の「ロッド」や「ワイヤー」を、巧みに差し込んでいきます。そして、車内の、ドアロックのつまみや、集中ドアロックのスイッチを、そのロッドの先端で、直接、押したり、引いたりして、解錠するのです。この方法は、鍵穴を、一切いじる必要がないため、シリンダーを傷つけるリスクがなく、また、比較的、短時間で、作業を完了できる、というメリットがあります。
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スペアキーがなくてもバイクの鍵は作れる
バイクの鍵を無くしてしまい、さらに悪いことにスペアキーもどこにあるか分からない。そんな八方塞がりの状況に陥った時、「もうバイクを動かすことはできないのだろうか」と絶望的な気持ちになるかもしれません。しかし、諦めるのはまだ早いです。たとえ手元に一本も鍵がない状態からでも、バイクの鍵を新たに作り出すことは十分に可能です。この、元となる鍵が全くない状態から新しい鍵を作成する作業を、専門用語で「鍵なし作成」と呼びます。これは、主に鍵の専門業者が行う高度な技術です。鍵屋の技術者は、まず特殊なライトやスコープを使って鍵穴の内部を覗き込み、中に並んでいるピン(タンブラー)の高さや位置を正確に読み取ります。そして、その情報に基づいて、専用のキーマシンを使い、ブランクキーと呼ばれる何も削られていない鍵の板を、ミリ単位の精度で削り出していくのです。それは、まさに鍵穴という暗号を解読し、それに合致する唯一の解を導き出すような、職人技の世界です。この方法であれば、バイクをどこかに移動させることなく、その場で新しい鍵を手にすることができます。ただし、全ての鍵屋がこの技術を持っているわけではなく、特に複雑な構造の鍵や外車の鍵となると、対応できる業者は限られてきます。もう一つの方法は、バイク屋やディーラーに依頼して「キーシリンダーごと交換する」というものです。メインキーだけでなく、タンクキャップやヘルメットホルダーなど、全ての鍵穴を新しいものに一式交換します。この方法のメリットは、紛失した鍵では二度とバイクを動かせなくなるため、盗難のリスクを根本から断ち切れることです。デメリットは、部品代と工賃が高額になること、そして作業に時間がかかることです。