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映画に出てくる鍵開け道具は本物?
ハリウッド映画や、スパイ小説の世界では、主人公が、クレジットカード一枚で、厳重なロックを瞬時に開けたり、あるいは、見たこともないような、ハイテクなガジェットを使って、金庫の扉を、いとも簡単に、無力化したりします。こうした、フィクションの世界で描かれる「鍵開け道具」は、果たして、現実の世界にも、存在するのでしょうか。その答えは、半分は「イエス」であり、もう半分は、エンターテイメントとしての「誇張」である、と言えます。まず、クレジットカードを使った鍵開け。これは、前述の通り、ラッチボルトだけで閉まっている、鍵のかかっていないドアに対しては、ある程度、有効な方法です。しかし、デッドボルト(かんぬき)が、きちんと施錠されている、防犯性の高いドアに対しては、全くの無力です。映画の中では、この前提が、しばしば、ご都合主義的に、無視されています。次に、ピッキングツール。映画では、主人公が、数秒間、ガチャガチャと、鍵穴をいじるだけで、どんな鍵でも開けてしまいますが、これも、現実とは、大きく異なります。実際のピッキングは、非常に繊細で、時間のかかる作業です。特に、ディンプルキーなどの、複雑な構造を持つ鍵に対しては、たとえ、熟練したプロであっても、数十分、あるいは、それ以上の時間を要することも、決して珍しくありません。そして、金庫のダイヤル錠を開ける際に、よく登場する「聴診器」。これも、プロの金庫技師が、実際に使用する道具の一つです。しかし、映画のように、数秒で、番号を特定できるわけではありません。内部の、極めて微細な音を聞き分けるためには、完全な静寂と、驚異的な集中力が必要であり、これもまた、非常に時間のかかる、地道な作業なのです。一方で、レーザーカッターや、小型のドリル、ファイバースコープといった、ハイテクな道具は、現実の、プロの鍵屋や、金庫技師も、実際に使用します。ただし、それらは、魔法の道具ではなく、あくまで、金庫の構造を熟知した、専門家が、その知識と経験に基づいて、効果的に使用して、初めて、その真価を発揮するのです。